関節拘縮とは
訪問マッサージの患者さんで高齢者の方が、風邪、腰痛、下痢などのちょっとした病気が原因で、大事をとりすぎた結果、廃用症候群を合併して寝たきりになってしまったという話は、珍しいケースではありません。
そうなったことで、関節を動かさない状態が続くと硬くなり拘縮につながっていってしまいます。
関節の周りの軟らかい部分(皮膚、筋肉、腱、靭帯など)の変化が原因で関節の動く範囲が狭くなった状態のことを関節拘縮(かんせつこうしゅく)といいます。
英語ではcontractureと書き「contract=収縮する」という言葉が語源であり、もともとは「関節によって隣り合う2つの部分が、筋肉の収縮によって互いに近づいた状態が継続していること」というような意味があったようです。
しかし、最近では「筋肉の収縮によって互いに近づいた状態が継続していること」は拘縮に含まれないという考え方もあるようです。
神経系の異常などで、筋肉が緊張している状態が原因で関節の動く範囲が狭くなっている場合などは、拘縮に含めないほうがよいという考え方です。
その他にも、痛みなどが原因で、力んでしまって筋肉が収縮しているために、関節が動きにくい場合や、認知症などのためにリラックスしにくく、関節の動く範囲が一時的に狭くなっている場合なども、拘縮とはとらえてないようです。
さらに、関節の動く範囲には「体が硬い、または軟らかい」などと表現されるように個人差や年齢による差があるのも事実です。
まずは、関節拘縮とはどういうことかを考えてみたいと思います。
変形性膝関節症
みなさんは、人間が一生のうちで地球5周分もの距離を歩くということをご存知でしょうか?しかも、脚には、一歩踏み出すのに体重の3~4倍、階段の昇降では6~7倍もの負担がかかります。
そうなると、いろいろなひずみが体に生じてしまうのは仕方ないことかもしれません。
そのひずみによって起こる痛みのなかで、膝の軟骨がすり減ったことによって起こるものが「変形性膝関節症」とよばれています。
男女で比べると1:4の割合で女性に多くみられ、肥満や遺伝子も関与しているといわれています。
※肥満度(BMI)=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
25以上を肥満
その中で、原因がはっきりわからないものを1次性変形性膝関節症といいます。
「変形性膝関節症」は女性の割合が多く、女性ホルモンの分泌が減少する50歳以上の方にかかる率が高くなります。また、女性は男性に比べ、体重を支える筋力、膝を安定させる下半身の筋力が弱いため、膝に負担がかかりやすいのです。
体質的になりやすい人もいて、年齢とともに手指の第一関節が節くれだってくる「ヘバーデン結節」ができる体質の人は、かかる要素が高いともいわれています。
けがなどの後遺症として起こる変形性膝関節症を2次性変形性膝関節症といいます。
原因となるのは、ひざやその周囲の骨折、靭帯損傷、半月板損傷、膝蓋骨の脱臼、膝関節捻挫などです。
細菌感染による病気が原因になることもあります。
けがをした当初は、痛みも少なく、無理がききますが、年齢を重ねるにつれて、徐々に痛みが出てくることがあります。
膝の骨は軟骨という厚さ3~4mmの柔らかい骨でおおわれていて、それがクッションのような役割をしています。
ところが、年齢とともに膝を支える筋力が低下し、関節に不具合がでると軟骨が次第にすり減ってきます。
それにより、痛みが出てくる病態が「変形性膝関節症」です。
はじめのうちは、朝起きたときの「膝のこわばり」や階段を降りるときの痛み程度ですが、進行すると、平地を歩いても痛くなります。
膝に水がたまることもあり、(水は整形外科で抜いてください、くせになるということはないようです。)動き自体も拘縮のため制限されています。
痛みのため活動の世界が小さくなり、痛みと相まって、精神的にも抑うつ的な「孤独な老人」になってしまい、ついには寝たきりになってしまう場合もあります。
パーキンソン病について
特徴的な症状は1.固縮(こしゅく/筋肉がこわばる)、2.動作緩慢(動きが小さくおそい)3.振戦(しんせん/手足がふるえる)で、これらは3大主徴といわれます。
数ある神経難病のなかで最も患者数の多い病気ともいえます。
パーキンソン病には根本的な治療法はなく、そのため徐々に症状が進行し、手足の運動障害を中心に体動が困難となり、最終的には寝たきり状態になってしまうのが一般の経過になります。
しかし、最近は薬物の治療が進歩したため、短期間のうちに寝たきりになる患者さんは少なくなってきました。
①何とかして寝たきりにならないようにする
②寝たきりの人にはまず起立できるようにする。
③上手に歩行できるようにサポートする。
というそれぞれの状態に対応できるように重症度分類によって施術計画を立てています。
変形性腰椎症
腰痛は、自覚症状として頻度の高い症状です。そして、高齢になるほど増加する傾向があります。つまり多くのお年寄りが腰痛持ちなのです。
腰痛の原因はさまざまで、時々、癌の腰椎転移や、腫瘍、血液の病気(骨髄腫)、感染(脊椎炎)などが認められることがありますので、レントゲン(X線検査)等で正確な診断をする必要があります。
とはいっても、老化によって起こる腰痛の原因は、ほとんどが良性疾患で、その代表的なものが、「変形性腰椎症」、つまり、老化現象によって背骨、腰骨が変形したために起こる痛みです。
変形腰椎症は、朝起きた時の動きはじめの痛みが特徴です。また長時間同じ姿勢を続けたときなども痛みが出やすくなります。
腰痛の部位は、腰部全体に漠然と感じる場合や、棘突起(きょくとっき)とよばれる正中の(いわゆる背骨の真ん中の線上)骨組織の周囲であったりとさまざまです。
また、おしりの部分臀部(でんぶ)や太ももの裏側大腿後面まで、痛みを感じることもあります。
とくに、臀部の痛みは高頻度に見られます。変形が高度になると、外見上も体が側方に曲がったり、後ろに曲がったりし、痛みのため、長時間の立位が困難になってきます。
このような症状がよくなったり、ぶり返したりしながら、数時間かけて少しずつ変形が進んでいきます。
また、高齢になるにつれ、骨がもろくなる骨粗鬆症も合併し、腰椎圧迫骨折を生じたり、変形により神経(脊髄)を圧迫し、坐骨神経痛を生じたりする場合もあります。
脳卒中後遺症
具体的には脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血が主な原因となります。
脳卒中は、現在の寝たきりの原因の1位です。
訪問にうかがってるスタッフ・施術者が最も出会う機会が多い疾患ともいえます。
これらは、脳の血管が詰まったことにより生じる虚血性脳卒中を脳梗塞と呼び、脳の血管が破れたことにより生じる出血性脳卒中、いわゆる脳出血の二つに分類されます。
脳卒中が起こると「血管が詰まる」「破れた」いずれの場合も脳のある部分が障害を受けて脳細胞が死滅してしまい、その脳細胞がコントロールしていた体の部位も正常に機能できなくなります。
死滅した脳細胞は新しいものに生まれ変わることはありませんので、脳の障害部位により、話せなくなったり、記憶を失ったりとさまざまな後遺症を残すことになります。